世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!

3

 まだ日が高く昇っていて、窓から光が差し込む。
 9月の残暑と心地よい風が吹く。
 部屋には長机と椅子が囲むように並べられ、10人ぐらいのスタッフ達が、壁に向かってせっせと作業していた。
 大量の段ボールが机の上に載っていて、できあがった封筒が中に詰め込まれていた。
 結花は丸岡の隣に座って、作業をはじめる。
 壁掛け時計を一瞥すると、10時になったばかりだった。
 お昼休みまであと2時間。
 
 なんでこんな仕事しないといけないんだろう。
 本当だったら、夫と娘と一緒に住んで、悠々自適な生活を送っていたはずなのに。
 お姫様のような扱いされていたのに。

 もう嫌! こんな地味な仕事ばっかしたくない。
 せめて電話の応対とか、PCで作業とか、採用とかがいい。
 
 結花は3ヶ月の研修を経て、7月に人事の事務作業に配属された。
 初っ端から上司だろうが先輩だろうが、職場でも自分のことを「ゆいちゃん」と言うわ、誰に対してもタメ口で上から目線。
 
次の日には、可愛い新人がやってきたではなく、ヤバイ人が入ったとして、社内全員に結花のことが知れ渡っていた。
 それでも、最初は上司や先輩達は、電話対応や事務作業を教えていた。
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