世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!

8

 チャレンジ枠の部屋に戻った結花は、丸岡と服部と向かい合わせで椅子に座っていた。
 結花は足をしっかり閉じ、手は膝の上に乗せて座っていた。
 
 午前中あのババアに死ねとか言われたし、ここは大人しくいいとこのお嬢ちゃんを演じなきゃ。

「落合さんが社長室に行ったんですけど、心当たりありますか? 私は彼女には営業部に行ってもらいたいのでお願いしたのですが?」
 服部が努めて穏やかな口調で尋ねるが、その節々にはとげがあるように見えた。
「大変そうだから、交代しただけです」
 たまには別の部署も行った方がいいと思いますと語尾を伸ばさず、説得力を持たせた。
「そうですか。落合さんは、力仕事が少し難しい方なんです。最初無理して色々やってたら、体壊してしまったんです。それ以来、負担少ない仕事をまわしてるんです」
「へー、そうなんですねぇ。てっきり元気そうに見えたので。知らなかったです」
「社長から聞いたんですが、落合さん、足痛そうにして来たってお話ですが、心当たりありますか?」
 
 落合は足を踏まれた後、頑張って立ち上がり、痛みをこらえながら、浅沼がいる社長室に向かった。
 普段は結花や吉原が来ているのに、落合が来たことで「珍しいね」と声かけた。
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