僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
プロローグ
近藤(こんどう)くん。先生は職員室に行ってくるから、その間掃除をお願いね」

「……あ、はい」

先生は僕をその部屋に残し、運動シューズの音を響かせながら、足早に廊下に出て行った。

僕はぐるりと部屋の中を見回して、ため息をひとつつき、途方に暮れた。

年季を感じる長机にパイプ椅子、乱雑に物の詰め込まれた本棚。

じわじわと感じる埃っぽさに嫌な予感がする。

「くしゅんっ」

思ったとおり、埃アレルギーが出たようだ。

このボロ教室、いったい何年放置されていたのだろう。

「掃除をお願いって言われても困るんだけど……」

洟をすすり上げながらボソッとひとりごちる。

そもそも、掃除道具がどこにあるのかすら分からないのに。見たかんじ、教室の中にはないようだし。

何をどうしたらいいか分からず、手持無沙汰に本棚を眺める。

そしてふと、違和感を覚えた。
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