僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
さくら
霞病にかかった人のうちの一パーセントが引き起こす脳損傷。

天宮くんの命を奪ったのは、そんなまれな合併症だった。

お葬式は、近親者のみでひっそりと行われたとのこと。

「本当は、今年の四月に脳の異変が見つかって、余命宣告を受けていたの」

そう苦しげに、だけど穏やかな口調で天宮くんのお母さんが語ったのは、葬儀が終わってしばらく経った頃、写真部の皆で家まで挨拶に行ったときのことだった。

仏壇の近くには、まるで今すぐにでも動き出しそうな天宮くんの写真が飾られている。

「だけど学校に居づらくなるから、誰にも言わないでって強く念を押されてね。ぎりぎりまで、普通の生活がしたいと望んでいたのよ」
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