続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
「ふぅ……働くとこも探さなきゃ……」

出産すれば、暫く働きに出ることは難しい。

僅かな貯金と、安堂不動産で働いたお給料の振込があるとはいえ、とても十分な額とは、言えない。

それでも、赤ちゃんだけは守ってあげたい。

何も、もってない私が、唯一神様からもらったクリスマスプレゼントだから。たとえ、颯と一緒に居られなくても、私が、ずっとずっと欲しかった『家族』というプレゼントだから。

(家族か……)

ふと、颯のお母さんの事が頭をよぎった。

もしかしたら、颯のお母さんも、今の私と同じような気持ちだったのかもしれない。

私は、コートの上から胸元のネックレスにそっと触れる。颯の家を出るときに置いていくべきなのか最後まで悩んだが、もう二度と颯に会えなくても、颯が、いつも私達の側に居てくれるような気がして私は、どうしても、このネックレスを手放すことができなかった。


「お腹減ったね……」

ここに来るまでも、何度か吐き気に襲われて、吐きすぎたせいだろうか。今度は、やけに、お腹が減ってきた。

(あ……)

ちょうど見えた、懐かしい看板に、私は、吸い寄せられるように足を向けた。
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