みっきーの恋活日誌
第1話 恋活宣言
 
 「今日から私は相方を探すことにする」
 「は?」
 充希は一大決心して、次男の寛人に切り出したのだが、やはり驚かれた。でもちゃんと言わなければ。
 「あのね、こないだ拓也、結婚したし、寛人も就職したじゃない。一応子育て卒業でしょ」
 「まあ、そうだね」
 「でね、そのうち寛人も結婚するじゃない」
 「いや、まったく予定無いから」
 「そうかもしれないけど」
 「そこは否定しないのね、ま、いいや。で?」
 「このさきずーっと、ずーっと、その、一人は寂しいなあと思うわけ。最近」
 「あー」
 寛人は細い目をますます細くした。
 母親としては、なかなか言い出しにくい。
 「その、だからね、えっと、相方というか、パートナーをね、探したいと思うんだけど」
 「いいんじゃない」
 「え?」
 あまりにもあっさり寛人が言うので、拍子抜けだ。
 「いいの?やじゃない?」
 「俺もちょっと思ったことある。かあちゃんずっと一人でいるのかなあって」
 「そ、そうなんだ。じゃあ、恋活してもいい?」
 「俺に了解得る必要ある?」
 「だって、やっぱり一緒に住んでるし、ちゃんと知らせておこうと思って」
 「おーけー。がんばってね」
 「お、おう」
 息子の意外とあっさりした反応に胸をなでおろしながら、充希は自室に戻った。
 離婚後運よく入れたこの都営住宅で、二人の息子を育てながら、訪問介護の仕事をして生活を支えてきた。
 数年前に就職して独立した長男の拓也はつい最近結婚した。
 次男は就職したばかりで、彼女もいない様子だが、いつかは出ていくことを考えると、このまま一人で死ぬのは寂しすぎると思うことが多くなっていた。
 離婚したのはまだ、次男が歩き出したころ。
 そこから長い間、恋を一度もしなかったと言うと噓になるが、再婚しようと思ったことはない。
 仕事も子育ても、大変じゃなかったとは言えないけど、子供たちはかわいかったし、仕事もやりがいがあった。
 両親は離婚したことが気に入らなくて、あまり助けてくれなかったけど、友達や職場の人たちや、いろんな人に助けてもらった。
 ただ、やっぱり願わくは、もう一度好きな人と一緒に歩む人生を送ってみたい。
 恋活してみよう、そう決心したのは今年の正月。
 初詣に行って、いつもは子供たちの健康を祈るばかりなのに、おもわず、もう一つお願いしていたのだった。
 どうか、素敵なパートナーができますように、と。
 祈ってはみたものの、手段がわからない。
 なんといっても私はもう47歳なのだ。
 合コン?そもそも行ったことないし、この年齢対象の合コンなんて聞いたことない。
 結婚紹介所?バツイチおばはん、中高年、美人でもないし、需要ないでしょう。お金もかかるって聞いたことある。
 知り合い、近所の人、仕事関係は、絶対だめだ。うまくいけばまあ良いとしても、だめになったら下手すると、職場も家も変えなければいけなくなる。
 残るは、ネットで見たことある広告。
 アプリだ。なんとかパートナーとか、お見合いナニガシとか。
 検索してみる。
 思ったよりたくさんあるものだなあ。
 あ、バツイチ応援してくれてるアプリもあるし、高年齢の利用者がたくさん使ってるアプリもある。
 なになに恋愛相手を主に探すものと、結婚を見据えてのタイプのもあるのかあ。
 早く結婚したいわけじゃないけど、遊びじゃなくて、ちゃんとお付き合いして、うまくいけば結婚も考えたいから、やっぱり婚活アプリがいいかな。
 よし、これにしてみよう。
 フォーエバーラブ、略してフォーラブ。
 利用方法、同意書、あら、免許書の写メ送るのか。どきどきしてきた。
 でもこれで、年齢とか確認するのね。犯罪の抑止力にはなるかな。
 で、載せる名前はハンドルネームとか、仮名ね。なににしよう?
 松本充希。mituki
 そのままじゃだめか。
 かわいい名前にしようかな。
 すず?めい?さくらちゃん?
 恥ずかしくなってきた。47歳女性だぞ。
 あ、47でも元々かわいい名前の人もいるかあ。でものちのち違うってわかったときに、バツ悪いしなあ。
 あだ名ならいいかな。
 よし。
 名前:みっきー
 年齢:47
 性別:女性
 職業:会社員
 離婚歴あり
 いろいろ書き込むところあるなあ。
 趣味?
 うーん。読書、映画鑑賞、ラジオ、散歩。
 最終学歴、大卒。
 身長、体重。
 あらー体型も聞くの?
 ややぽっちゃり、で。
 相手に望むもの?
 学歴、身長、体型、離婚歴、子持ち、年収。
 そうか、普通は気にするのね、こういうの。
 特に気にならないけど。
 性格とか、相性は気になるけど、そんなのこういうフェイスシートじゃわからないしなあ。
 あ、これは大事だ。
 遠距離はだめだな。東京、近県の方。
 写真?あー、どうしよう。みんなどうしてるのかな?
 出してない人もいるし、ペットとか花の写真でもいいのかあ。
 とりあえずうちの愛犬みにーちゃんを貼り付けます。
 自己PR?
 はじめまして。よろしくお願いします。
 くらいかな?
 いったんこれで登録。
 で、これでどうするのかな?
 男性側の情報がたくさん来たぞー。
 あら、写真やっぱあったほうがいいなあ。
 あ、イケメン、若すぎるなあ、やだー、息子と同い年じゃない。ないない。
 うわー、やばい、こんなおっさん、無理。
 って私も傍から見ると、イタイおばはんかもなあ。
 バツイチも結構いるのね、安心。
 体型関係ないって思ってたけど、ここまでお腹出ちゃってるのは、やだかな。
 髪の毛も、気になるなあ。はげかたにもよるけど。
 あ、この人タイプ。どれどれ。
 アウトドア派かあ。一緒に登山してくれる人希望って、無理だなあ、残念。
 見ているだけで、気付くと小一時間過ぎていた。
 見ている間にも、いいね、がいくつも来る。
 この、いいね、にいいねを返すと、そこから交流が始まる仕組みらしいけど、まだ、いいね、を返したい感じの人はいない。
 ただ、こんなおばさんでも、たくさん、いいね、をもらえることが意外だった。もしかするとサクラがある程度いるのかもしれない。
 でもちょっとしたモテ気分。嘘でもいいから、そんな気分を味わうのは、悪くない。
 いいね、を返そうかな、と思った人がいても、数日は返せないで過ぎていった。
 
 
 










 
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