【短編集】婚約破棄から幸せを掴むまで

⑥転生したら皇女様でした〜推しがピンチなので婚約破棄してから国に持って帰ります〜


「………ぁ」


パッと光の速さで流れる映像に衝撃を受けた。
今、はっきりと思い出せるのは前世の記憶だ。

状況を確認するも、やはり此処は現実。

そして視線の先……。

人生の全てを掛けて愛していた推しが目の前で責められている姿を見て、持っていたカップがミシリと音を立てて割れた。


「ッ、リリアーナ殿下、大丈夫ですか!?」

「お怪我はございませんか!?リリアーナ殿下?」

「………」


心配そうに此方を見る侍女を横目に、大丈夫だと意味を込めてスッと手を上げる。


「……チェリーに付き纏っていたのはお前だな!」

「えっ、ち、違いますけど…ッ」

「チェリーから相談を受けている!お前のその気色悪い髪を見間違う筈がないだろう!?」

「で、でも……僕はっ、落としたハンカチを」

「言い訳はいらないッ!チェリーが怖がっているじゃないか!!いい加減にしろ」

「わっ……!」


ドシッと尻餅をついた推しを見て、血走った目を見開いた。

覆いかぶさった前髪、グラデーションになっている不思議な髪色。
黒縁の冴えない眼鏡と、マッチ棒のような細い体。
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