あなたが婚約破棄されたいならどうぞご自由に。ですが、私の周囲は怒っているので覚悟をなさって下さい。私は私で王太子殿下に溺愛されてしあわせになりますので
 が、これまで何百人もの婚約者候補があがったにもかかわらず、だれ一人として婚約者に決まったことはない。

 噂では、想い人がいるのだとか。

 そんな王太子殿下とは、子どものころからの読書仲間である。仲間、というよりかはこの図書館でたまに鉢合わせし、本のことを話したり隣り合わせで本を読んだり、という程度なのだけれど。

 わたしが司書になり、この図書館で働けるようになったのも、王太子殿下の口添えがあったからである。
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