裏側の恋人たち

響の場合 ② お嬢さまのウエディングパーティー





二ノ宮のオジョウサマと館野先生の結婚式が行われたのは素晴らしい青空が広がる初夏だった。

教会に隣接した広場でのガーデンパーティーには病院スタッフたちも数多く招待されていた。

政財界を集めたきちんとした披露宴は別に行われるらしい。
そりゃあそうか、なんと言ってもあの二ノ宮グループのお嬢さまと医学界のホープ館野ドクターの結婚なのだから。
たくさんの有力者、お偉いさんが集合する堅苦しい披露宴になることだろう。

そんなことが予想されるからだろう、披露宴とは別にこのようなガーデンパーティーが催されたのは。

立食パーティーの気軽さからか私のようなそう親しくもない関係でも同僚という立場で出席することができた。

私は別に二人の幸せな姿が見たくて参加したわけじゃない。
このパーティーのケータリングを請け負うのが瑞紀の会社だからだ。


今回のパーティーは基本は立食スタイルだが座って寛ぐことができるパラソル付きのテーブルセットがあちこちに置かれていて疲れる心配はなさそう。

料理を提供する大きなテントに視線を移すと、テキパキと動く調理スタッフ、ホールのスタッフの動きにしっかりと目を光らせる瑞紀の姿があった。

瑞紀のお店でもこんな大きな規模のケータリングサービスを提供するのは初めてでかなり前から入念に準備を進めていたことを知っているから私も無事に成功することを見届けたかったという気持ちが強い。

招待客が多いだけでなくお料理の種類も多く、会場にはいつもより多くのスタッフが投入されていた。
料理の提供だけではない大変さを知っているからこそ色々な角度から会場内を見てしまう。

テーブルコーディネートも重要なポイントだ。

何度もプランナーと打ち合わせをしていたことも知っている。
私との外回りがほとんどなくなってしまうほどに。





パーティーは盛況だった。

新郎新婦は美しいし、その友人知人まで美男美女揃いで見栄えがいい。
堅苦しくもなく、誰もが笑顔でこのパーティーを楽しんでいる。
二ノ宮グループのトップも普段の威厳のあるオーラを消しただの父親として穏やかに新郎の父親と共に若夫婦を見守っていた。

後輩の愛菜はこの場に女優の早川琴の姿を見つけてさっきから興奮していた。
女優をエスコートしている男性はちょっと強面なイケメンでなんだか怖いくらいお似合いだ。

ケータリングの方も問題ないどころか大好評。
お料理の見た目、味、サービススタッフの対応など全て完璧だったと思う。

新郎の挨拶も終わり後は来客が退場するだけとなった頃、
私もホッと胸を撫で下ろしたーーーとはいかなかった。



私の視線の先にいるのは、
瑞紀とーーーーコーディネーターをしていた若い女性。

初めは会の成功をお互いに労っているように見えたのだけど、途中からあれ?となり、今は完全に親しい間柄の会話をしているようだ。

そこでボディタッチとか必要ないよね。

コーディネーターの女性が親しげに瑞紀の上腕に触れている。瑞紀も満更ではないようで避けるでもなく女性に笑顔を向けていた。

瑞紀を見つめる女性の目には明らかに熱がこもっている。
ただの仕事仲間を見つめる顔じゃない。



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