あのねあのね、



「……すきなんだけど」


すぐそばで聞こえる甘いセリフに、パクパクと口を開閉させるだけで言葉が出てこない。


どうしていいかもわからない。
ただただ心臓の音がうるさいだけだ。


「はあ〜〜……自分がこんなんなるとか知らねぇし。まじでどうにかして……」


「っ、あ、えと、あの、どどっ?」


緊張と動悸で口が回らない。
夕凪くんはそんな私を至近距離で見つめてくる。


「ほんとにさ……いいかげん可愛すぎてキレそう」


「?、?」


「なち」


どうしたらいいかと目線を泳がせていると、その綺麗な目に射抜かれる。


そしてすんなりと眼鏡が外され、そのままゆっくりと唇に柔らかい感触があたった。すぐにそれは離れ、またくっついてくる。


夕凪くんは飽きもせず何度も私にキスをする。それは唇だけにとどまらず……


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