離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
(でも、その気遣いは私にはかえってつらい。一緒にいたら桔平さんを忘れることができなくなるもの。きっぱり決別してくれたほうがずっといい)

「離婚前提であることは私も納得済みでしたから。予定どおりで大丈夫ですよ」

 晴れやかな笑みを浮かべたかったけれど、私の笑顔はどこかヒリヒリした痛みをともなっていた。

(お願い。今さらおかしなこと言ってかき乱さないで……もうそっとしておいて)

 桔平さんは悲痛な表情で押し黙る。

(迷わなくていいんですよ、桔平さん)

 私の心の声に背中を押されたのか彼は心を決めたように顔をあげる。だが、発せられた台詞は私の予想とは真逆のものだった。

「勝手なことを言っているのはわかってる。だが……せめてあと三か月だけでいいから夫婦でいさせてくれ。頼む!」

 必死の形相で頭をさげられ困ってしまう。

(三か月。その期間をおくことで桔平さんが納得できるのなら……)

 勢いに押されるようにして私はうなずく。

「わかりました」
「ありがとう!」

 彼の顔がパッと輝く。まぶしい笑みに私の胸はドクンと高鳴る。

「さっそくだけど、美紅の次の休みはいつ? 俺と重なる日があればどこか一緒に出かけないか?」
「え、どうして?」

 思わず聞いてしまった。だって、桔平さんにデートに誘われていると解釈できるほど私の頭はお花畑ではない。これまでずっとさけられていたのに……。
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