離婚直前、凄腕パイロットの熱烈求愛に甘く翻弄されてます~旦那様は政略妻への恋情を止められない~
(ずっと聞きたかった言葉。でも、それは本当に桔平さんの本心?)

 彼は無理して私を好きになろうとしているのではないか。いや、もっとなんの意味もないのかもしれない。抱き合うためのリップサービス、大人の男女にはそういうこともあるのだろう。
 自分でも卑屈だなと思う。でも、この一年間で愛されていないことを存分に思い知ったから……急に自信を持つことなんてできない。どんなに期待が膨らんでも根っこの部分に残る不安は消せない。桔平さんが急に心変わりをした理由は私への罪悪感と同情のせいなのでは?と疑ってしまう。

「美紅、どうかした?」

 彼が顔をあげて甘い瞳で私を見る。

「あ、なんでもないです」

 今さら待ってほしいとは言えなかった。そんなこと言ったら、ますます子どもだと思われてしまいそうで。

「続けてください、桔平さん」

 私は彼の背中を抱き締める。だけど、桔平さんは私の微妙な心の変化に気がついたのだろう。私の背に優しく手を回し、そっと身体を起こしてくれる。

「悪かった。美紅の気持ちを無視して先走りすぎたな」

 桔平さんは宝物に触れるような手つきで私の手を取り、甲に恭しくキスを落とした。

「美紅を大切にしたいと思っているのに……子どもだな、俺は。ちゃんと待つよ。君の気持ちが俺に向くように努力する」

(私? 私の気持ちは……)
< 66 / 183 >

この作品をシェア

pagetop