雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。

ちょうど2週間前。

女子更衣室から出てきたのは見るからに怪しげな男。

声をかけると走り出したその男を、私は捕まえて拘束した。

昔、過保護な父に2年ほど習わされていた護身術と柔道が役に立ったのだ。

その後、先生の話によると男の鞄からは女子生徒の制服が出てきたらしい。


「その前は男と猫を助けたんだろ。お前の噂はそんなのばっか」

まさか、暴走族総長の耳に私の噂が入っていたとは。

前々から姫候補をリサーチしていたのだろうか。

ちなみに男と猫を助けたというのは、猫を助けるため木に登った委員長が木から降りられなくなり、私が駆けつけたという話。

「俺は姫にするなら、お前みたいな強さと優しさを兼ね備えてる奴がいい」

彼が求める姫はあくまでも櫻子さんの身代わり。

それでも、私がいいと言ってもらえたことは素直に嬉しかった。

人の役に立ちながらお金をもらえるなら、喜んでその役を引き受けたい。

だけど、気になることがもう一つ……。

「あの……念の為、確認するけど。そのお金って出処は?」

何か悪いことをして得たお金だったら受け取れない。 


< 10 / 66 >

この作品をシェア

pagetop