もうごめん、なんて言わないで


「それはあの人とも継続したいっていう相談?」


 驚いて顔をあげたら、俊介は困ったように眉尻を下げて微笑んだ。

 慌てて「違う」と首を振ると、優しくぽんぽんと頭をなでられた。


「可能性もないのにズルズル引き延ばされるくらいなら早いとこ言ってほしいって、俺なら思うけどね」


 正論のあまり言葉もでない。

 合わせる顔がなく、俯いてぎゅっとスカートを握った。


「こらこら、そんな落ち込まないの」
「ごめん」

「他の男に言い寄られてるっていうのに、冷静に相談のってあげる広い心の持ち主は俺くらいなもんだぞ」


 和ませようとしてくれているのか、私を見る顔があまりにも得意げで顔の筋肉が緩んだ。目を見合わせ思わず笑ってしまう。


「ときに、美亜ちゃん」
「なに?」

「結婚しない?」


 突然、隕石が落下した。
 それほどの衝撃があった。

 ハンドルにもたれかかった俊介がこちらに顔を向けてくる。


「結婚しよう、俺たち」


 どきっと心臓が跳ねた。

 そのまま優しく手を握られて、微笑む彼の頬にはくっきりとした笑窪が現れる。


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