冷徹官僚は高まる激愛を抑えきれない~独占欲で迫られ懐妊いたしました~
三章 熱

【三章】熱

 さすがに「野暮用」はない。

 披露宴の後、白無垢姿で控室に戻り、着替えながら考えた。いくらなんでも、あれはひどい。スタッフさんに着物を脱がされつつ、放心状態で椅子に座る。

「お疲れですか?」

 着付けのスタッフさんに気遣われ、私は慌てて首を振る。
 惨めだった。
 芳賀さんにとって私との結婚は野暮用みたいだし、もしかしたら別に本命の女性さえいるかもしれない。

 でも泣いたら、なんだか負けてしまう気がした。
 ぐっと唇を噛む。

「……そっちがそのつもりなら、私だって好きにしてやる」

 だから直利さんを私のペースに巻き込んだ。

 ……というか、いつしか普通に心配になった。
 まったく休まないし、どうやら食事も適当みたいだし。

 思い返せば、私がウサギだったとき、直利さんは仕事の話をしていたのだった。……苦しんでいたのだった。

 心根が優しい彼は、いろいろと割り切れないところがあるのかもしれない。

 気がつけば、年上の彼に対して変な言い方かもしれないけれど、弟にするように世話を焼いている自分がいた。

 相変わらず彼は私に興味がない。けれど、「思春期の子供じゃあるまいし」は効いたみたいで、最低限の連絡はくれる。
 プライド高そうだもんね。ふふん。

 残すようになったメモにも……謎の生き物が描いてあったり。
 直利さん、絵が下手だ。
 字はすごく綺麗なのに!
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