冷徹官僚は高まる激愛を抑えきれない~独占欲で迫られ懐妊いたしました~
中川から彼が知っていることをつぶさに聞き出す。
「この中に知ってる顔がいるか?」
スマートフォンで数名の写真を見せる。
「誰スカ」
「政治家だ」
「ニュース見ないんで」
困ったように眉を下げた中川が「あ」と写真をスクロールする指を止めた。
「……知ってるのか?」
「この人、事務所に書類運んだことあります。書類っつうか、多分現金だったけど。ポスター貼ってあったから」
彼が指差したのは……鹿沼議員。俺の遠縁、鹿沼千鳥の父親だった。特に驚きはない。
「ほかは……」
スクロールする指が画面の隅を誤タップした。そのせいでインターネットアプリが立ち上がる。最後に表示していたページが開いた。……由卯奈が働いているベーカリーのホームページだ。由卯奈の休みの件で連絡するため、電話番号を調べたのだった。
「パン屋? パン好きなんすか、芳賀さん」
「気にするな」
閉じようとした手を、中川が止める。
「オレ、この人も知ってます。つうか、幹部っす」
「……は?」
ホームページの右隅、オーナーとして名前が載っているのは例のいけすかない優男、佐野だ。
「幹部だと?」
「あー、ウチの会社、あれです、いろいろ普通の仕事? そういうんすか? そんなんもしてるんすけど」
フロント企業のことだろう。……よくよく調べれば、決して「普通の仕事」ではないのだろうけれど。
「飲食はこの人が。メインはクラブとかバーとかで、カフェとかもしてるんすけど、すげえ女好きで。顔採用なんですよね。で、落としたい女いるときだけ店に出て、遊ぶだけ遊んで……あとは大抵フー落ちさせるってチラッと聞きました」
フー、とは風俗のことだ。
「そういや最近、ガチで落としたい女がいるとかで機嫌いいらしいんすよ」
佐野のねちっこい視線を思い出して眉を寄せた。
「くそ、俺も現場を離れて勘が鈍ったな」
言いながら席を立つ。