余裕な後輩くんは,一途に先輩を想う。
ぽけ~とそれを見つめていた彼。

取り敢えず動かずそっと見守っていれば。

彼は丁寧に私と指を絡め,何かを掴むようにぎゅっと握る。

悲鳴を押さえようにも,片手じゃ足りない。

寝ぼけてるのか,誰かと間違えているのか。

そう思っている間に,彼は私の手の甲にそっと当てるだけの口づけをした。

間違えてるなんて有り得ない。

だって彼ははっきりと



『まい先輩』



そう音にした。

今まで先輩としか呼ばなかったくせに。

なんなの,いきなり。

なんなの…

混乱がMAXを極めて,何かを口にしようとして。

なのに彼は……すっと呼吸をひとつして,ベッドに繋いだ手を沈めたかと思ったら。

ーすやすやと気持ち良さそうに眠っていた。



「しんっじらんない!」



こんなの,私にどうしろって言うのよ……

離して貰えない手を途方に暮れながら見つめる。

そして目の前の彼に引きずられるようにして,その場で倒れるようにして眠りに着いた。
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