そのままの君が好きだよ
「――――もう一度言う。ディアーナは何も悪くないよ」


 サムエレ殿下はそう言って、わたくしの両手を握った。


「比べられて辛いだなんて――――そんなの唯の甘えだろう? 兄上は……俺達は王族だ。民を導き、幸せにする義務がある。そのために努力をする必要があるし、常に周囲の評価に晒されている――――そんなの当たり前のことだ。
俺はね……兄上には王族としての自覚が足りないと思う。ディアーナの方が余程、そのことを理解していたよね。将来王族になるからと、本当に努力してくれていたのに」


 大きなため息とともに、サムエレ殿下はわたくしのことをまじまじと見つめた。


「俺は兄上のことが許せない」


 まるで自分のことを話すように、サムエレ殿下は苦し気な表情を浮かべている。それだけで胸の痛みが温かく包み込まれるような、そんな心地がした。


「実はね……俺は兄上が婚約を破棄したことを、朝学園に来てから知ったんだ」

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