そのままの君が好きだよ
「そっ……~~~~殿下も人が悪いです。揶揄われて調子の狂った人間がお好きだなんて」


 言えば、サムエレ殿下は大きく首を傾げつつ、クスクスと笑い声をあげた。


「揶揄ってるつもりはないんだけどな。ディアーナに俺のことを意識してほしいとは思っているけど」


 そう言って殿下はゆっくりと跪き、わたくしのことを見上げた。あまりにも直球な欲求。直球過ぎて、それが彼の真意なのかよく分からなくなる。


(なんにせよ、この状態で意識するなって方が無理があると思う)


 跪き、わたくしを真っ直ぐに見上げるサムエレ殿下は、本当に世の女性が想い描く理想の王子様だ。殿下はわたくしの手を握ると、そっと触れるだけの口付けをした。心臓を直接撫でられるような心地に、肌が粟立つ。


「そろそろ行こうか」


 サムエレ殿下はそう言って、腕を差し出した。その途端、先程までとは別の緊張感がわたくしを襲う。おずおずと彼の腕に手を伸ばすと、殿下は嬉しそうに微笑んだ。
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