生首無双~異世界転生に失敗したら、多分こうなる~


 仕方ないので、近くに生えていた雑草を食べてみる。
「むしゃむしゃ……んぐっ!」
 急に寒気を覚える。
 その直後、全身、いや全首に痺れを感じた。
 どうやら毒草だったようだ。

 ピコン! と通知音が鳴る。

『スキル毒とスキル毒耐性を取得しました! これにより、ゲロスキルと毒が融合。新たな技として“毒のゲロ”が使用できます』
「えぇ……」
 そんなの技として使えるのか?

 俺は傾げる首もないので、コロコロとまた森の中を進んでいく。
 その間もずっと揺れで酔ってしまい、ゲロを吐きまくる。

  ※


「きゃあああ!」


 どこからか、女性の甲高い悲鳴が聞こえてくる。

 俺は急いで首を回して転がしていく。

 そこには、天使のような美少女がいた。
 長い銀髪に緑の瞳、小顔で守りたくなるような女の子。
 豊満なバストにモデルのような長身。
 短い丈の修道服を着ている。
 頭には白いベールをかけて。

 地面に倒れ込み、腰を抜かしているようだ。

 そのシスターを囲むように、5匹のモンスターが睨みつけている。
 名前はわからないが、見たところ、狼の系統だな。

 俺はとりあえず、助けに入ることにした。
 と言っても、戦う手段は持ち合わせていないのだけど。

「グシャアア!」
 雄たけびをあげる狼共。
 俺は情けなくコロコロと頭を転がしての登場。

「大丈夫ですか? お嬢さん?」
 なんてテンプレのセリフを言ってみた。
「あ、あの魔物さんですか?」
 この子も俺をモンスター扱いか。
 まあいいや。とりあえず、助けてやろう。

「俺が相手になってやる! 来い、貴様ら!」
「グシャアア!」
 一匹の狼が俺に目掛けて飛びかかった。
 ガブリ! と鋭い牙で嚙まれる。
 だが痛くも何ともない。

 しばらく噛まれること数分間。
 俺はなにも出来ないでいた。
 敵の狼も噛み殺せないことに、苛立ちを隠せないでいるようだ。

 それをシスターちゃんと残りの狼たちが黙って見守るというシュールな空間。

 どうしたものか、俺は最強だが攻撃方法がない。
 そう言えば、さっき毒のゲロを取得したとか言ってたな。
 よし試してみよう。

「うおぇぇぇ!」
 いつも通り、ゲロを吐き散らす。
 すると驚いたことに吐しゃ物を喰らった狼は、一発で死んでしまった。
 口から泡を吹き出して。

「こ、これは使える!」
 そう思ったら、あとは楽勝。
 同様の攻撃を繰り返すだけ。
 あとの4匹も秒で倒してしまう。

『ゲロスキルがレベル3に上昇しました。毒のゲロもレベル3に上昇』

 つ、強い。
 ゲロのくせして強すぎる。

 気がつくと、俺は空中に浮かんでいた。
 なぜならば、先ほど助けてあげたシスターちゃんが、俺の顔を宙にかかげているから。

「あなた様は神から祝福を受けた勇者様ですね!」
 なんて人をヒーロー扱いしてきた。
「いや、違うよ。俺の名前はロクロウだよ……」
 自己紹介をしてみると、彼女は目をキラキラと輝かせる。
「勇者ロクロウ様ですね! 私はシスター、アンジェラ。アンジーとお呼びくださいませ」
 勝手に勇者と認定されちゃったよ。

  ※
 
 それから俺はアンジーと旅に出た。
 というか、勝手に勇者と祀り上げられて、この国の王様と謁見。
 魔王を倒してこいと命令された。
 アンジーがそれを勝手に承諾。

 まあ歩く脚が出来たので、もうあまり酔うこともなく、街を歩くこともできた。

 飯もアンジーが買ってくれるし、生活に支障はない。
 あるとすれば、夜のことか。

 アンジーは俺に惚れているようだ。
 だが、宿で一緒に寝るとしよう。
 彼女は下着姿になり、俺を誘惑するようにして一緒に寝るのだが、俺は手も足もない。
 豊満なアンジーの胸にプニプニと押し付けられて、気持ちはいいのだけど。
 それだけだ。
 期待していた展開はなにもない。

「クソがっ! 誰だよ、異世界に転生したら、ムフフなライフがおくれるって言ったヤツ!」
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