不本意ながら、皇帝の胃袋を掴んでしまいました。~後宮の料理妃は俺様皇帝の溺愛求婚から全力で逃れたい~

【終章】「違う、命懸けの求婚だ」

 後宮の貴妃という正一品の位を辞して、早三日。

 久しぶりに帰ってきた雪蓉は、里山の変わりように驚いた。

 何が変わったかというと、まず家屋が建て替えられていたのである。

雪蓉が貴妃になったことにより、驚くべき額の結納金が支払われ、饕餮を鎮める任として支給される税金額が大幅に上がった。

 これまで最低限生活するだけの金額しか国から支払われず、世話をする子供が増えたとしても、支給額が増えるわけではないので、家計は当然苦しかった。

 自給自足のような生活をしていたのが、好きな食べ物が買えるようになり、女巫たち全員が新しい衣を着ている。

 さすがに贅沢できるほどのお金はないが、困窮することはなくなった。

 さらに、雪蓉がいなくなり、さぞかし女巫たちは苦労しているかと思いきや、雪蓉がいないことで責任感が生まれ、料理の腕もぐんと上がっていた。

 こうなると、なんで帰ってきた? という空気を感じざるを得ない。

もちろん子供たちは喜んでくれたし、仙は「出戻ってきたのはお前が初めてだよ」という嫌味のような言葉をかけたが拒絶することなく迎え入れてくれたし、雪蓉の居場所がないわけではない。

 ただ、雪蓉の必要性が、この地にはもう感じないというだけである。

 そんなことを考えながら、雪蓉は厨房で小さな女巫たちと一緒に饕餮に捧げる料理を作っていた。

ほんのり切ない気持ちになりながらも、料理には一切気を抜かない。

最後の仕上げを済ませ、雪蓉は満足げに笑みを漏らした。
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