小悪魔と仮面舞踏会

だから実瑚の告白は怒りが頂点に達しそうだった。

拳を固く握りしめ怒りで震えていた…。

お母さんとお父さんが途中で帰ってくれて安心した。

2人とも働いているから。

式だけを見に来てくれたんだ…。

式が終わったらそれぞれの仕事場に直行…。

良かった。2人が居たら絶対に深く傷つけてしまってた…。

実瑚…許せない。

金持ちだからって理由で人のプライバシーまで探り当てるなんて!

極悪人だわ!

でも実瑚のお父さんらしき人が

実瑚を叩いてくれたから

少しスッとした…。

「お前はなんて卑怯な奴なんだ!そんな娘に育ったなんて…私はガッカリだ!実に情けないよ…帰ったら覚えてなさい!」

そう怒鳴り散らしてから実瑚の手を引き

「先生!卒業式台無しにしてしまってすみません。私どもはこれで失礼しますから。」

と申し訳なさそうな顔をして言った後

実瑚の手を力強く引っ張るようにして帰って行った…。

教室内は嵐が去った後のように

シ~ンと静まり返っていた…

最悪な卒業式だった。

実瑚は私を逆恨みしてる…。

そして私も実瑚を恨んでいる。

結局は私も実瑚同様

過去に捕らわれてるんだ…。

こんな私は醜い、見苦しい。

過去を引きずってちゃ小悪魔失格…。

過去は過去なんだから。

今更思い返してもどうしようもない。

過去は過去

呪文のように言い聞かせるようにずっと頭の中でそう繰り返した。

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