一人三脚(いちにんさんきゃく)/SF&ホラーショートショート選②

ついにたどり着いた場所

”ついにだ…!”

”フフフ、とうとう、ココまでたどり着いた‼”

御年ジャスト50のムツオは、胸の中でそう呟いた

かの対象者に向かって、それは誇らしやかに

それの根拠は、”前人未踏”たる領域への第一歩を自分が到達したという自覚がもたらした恍惚感からであった

で、それは、靴底のズシリとした右足の踏み込み感で完結したと言っていい

その瞬間、ムツオの全身にはかつて未体験のトリハダ感によって支配された

こんときのトリハダを形成したのは、達成感、踏破感、やったぜ感…、それはモロ、心底からのウイン・ガッツポーズ…

***

”何一つ、いまいち、いや今三だったこれまでのオレがついに、やったんだ!誰もまだ切っていないゴールテープを、このオレがちょん切ったんだって‼記念すべきかく一歩は、このサイズ26.5の右足を覆ったコンバーズの靴底がその証を刻んだ!気持ちいい~、サイコーだぜ!!”

かくてムツオは人生50年の、自らが蓄積させたモヤモヤな分厚い雲を突破したことで、かつてないエクスタシーにココロを埋め込んでいた

超難度パズルを制覇するラストピースのように

だが…



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