最強王子とフェンス越しの溺愛キス


生吹くんは総長なの?



と思い切って聞いてみた。

真剣な質問に、真剣な顔で生吹くんは答えてくれた。



「新島から聞いたの?」

「うん……皆もそう思ってるって」



何をもって「皆」というかは知らないけど。でも、暴走族の間では有名な噂って事なのかな?


すると生吹くんは「俺はね」と、月明かりに照らされた漆黒の瞳を、ゆっくりと私に向ける。



「俺は――総長じゃないよ。

暴走族にも入ってない」

「……え?」

「だから、お昼に言ったでしょ俺。

噂なんて嫌いだって」

「あ……」



『本当、噂なんて散々だよ。いつも本人にとっていい事はない』



確かに、生吹くんは噂の事を毛嫌いしていた。

あれは「王子様」って呼ばれる噂に辟易していただけじゃなくて、「総長」って噂される事も嫌いって、そう言ってたんだ。



「生吹くん、自分が総長って噂されてるって……知ってたの?」

「色んな人が色んな場所で噂してくれるからね。すぐ俺の耳にも届いたよ」

「そう、なんだ……」



眉を下げて笑う生吹くん。その顔は、私が「魔女」と噂された時に浮かべた顔と一緒だった。


< 100 / 447 >

この作品をシェア

pagetop