最強王子とフェンス越しの溺愛キス

生吹くんは、相槌を打ちながら聞いてくれる。私は話を続けた。



「施設長は愛情込めて私を育ててくれたのに、誕生日にわざわざそんな事をお願いするなんて……。私は、どれだけ残酷な人間なんだって思って。

ある時から、施設長とは気まづくなっちゃった。気を使えばつかうほど、上手くいかなくなって。だから、高校入学と同時に一人暮らしを始めたの」



まるで、逃げるように――



そこまで話した時、生吹くんがポツリと呟いた。



「122450――12月24日、50歳の誕生日。この数字が無くてはならない美月のパスワードって知っただけで、施設長は嬉しいと思うよ」

「え」

「いつか会いに行こうよ。施設長に。会いたいんでしょ?美月」

「む、無理だよ……っ」



手を振って、否定する。

だって、本当に逃げるように出てきちゃったし……。向こうだって、私が顔見せに帰ってきたら戸惑うだろうし。



「(会いたい、けど……。
会う勇気が出ない……っ)」



下唇を噛み締めて地面を見た時。月光で出来た自分の影が目に入る。


< 115 / 447 >

この作品をシェア

pagetop