最強王子とフェンス越しの溺愛キス


一輝くんに、ふいにそう言われる。

泣きたい。泣ける、今なら。確実に。

だけど、まだ、ダメ。



「生吹くんが、帰ってくるまでは……」

「”大丈夫です”ってか?そんなに目に涙ためて?」

「それでも……、だ、大丈夫……っ」



確かに、一回でも瞬きをしたら涙は零れる。

だけど、自分が認めなければ、それは泣いたことにはならない――とわけのわからない事を思っていた、その時だった。




ふわっ



「もう、泣いて良いよ」

「え」



後ろから聞こえた、その声に、反応する。

ビックリして振動した私の肩に、その手は置かれている。



「(あぁ、私……)」



この手を、知ってる。

私を包んで守ってくれる、この手を――



「おかえりなさい、生吹くん……っ」

「ただいま、美月」



振り向いた瞬間に、涙が零れ落ちる。

頬を静かに流れた涙を、生吹くんの冷たい指が、そっと撫でた。


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