ポンコツ彼女

ポンコツ同士でウィズコロナ?

「アハハ…、あなたの愛車もサクラに抱き着かれてる」

「そうですね(笑顔)」

「取りましょうか?」

「いえ…、今日はこのまま走りたい気分です」

「そうですか…。しかし、きれいな車だ。オレのポンコツとはえらい違いだ(苦笑)」

「乗ってる私がポンコツですから…」

”そんなことあるもんか‼”

オレ…、絶叫してたわ、心ん中で。
だって…、このヒトがポンコツなら、このオレはスクラップ以上だし…。
それ、メンタル面でもだよ!

そんな意味不明なカッカが全身を駆け巡った気がした。
この間、”彼女”は短い髪を風にそよがせながら、優しい眼で無言だったわ。

***


「小島さん、どうぞ、乗ってください。よろしければ、自分はあなたを見送ってからここを出たいんで…」

「…じゃあ」

S美のその返事はやや間があった。

「気を付けて…」

「ありがとう、本橋さん…。今日はアナタと会って、こうして別れるまで最初から最後まで丸ごとが懐かしかった…。懐かしいいい匂いがしたんです」

「オレは楽しかった。クセになりそうなくらい」

「やだー、もう…(笑)」

それは、やけにおばさんモード入りのテレ顔でだった。
だが、正直、S美とのひと時は楽しいよりも懐かしいだった。

オレは自称ポンコツのジミ女運転するピカピカな黒ヴィッツを見送り、底なしの懐かしさに浸っていたよ。

これって、ほのかな欲情も伴っていた…。
遠く昔の十代のころ、もっと彼女といたい…、もっと深く繋がりたい…、あの子のカラダが欲しい…。
そう言うことだったようなんだ…。

そして、小島S美とカラダの関係を持ったのは季節がひとつ変わった夏の終わりだった。

ちなみに二人はその日を予め同意し合っていたよ。

「…なら、ワクチン接種は一緒にいこう。これで二人の身の清めは最終ステップ到達だよね?」

「ですね…。しっかり感染対策で、我慢も自制も結構ちゃんとでしたよね、私達…」

「うん…。その過程でキミがポンコツじゃないって知ったし、ワクチン注入でもう、我慢、自制はクソにしたいな」

「やだー、もう(笑い)」

このセリフ、表情共にS美とであったあの日と一緒だった。
その瞬間、オレは吹っ切れたように誘ったよ。

「まだ早かったらはっきりNG出しでいいから。…待ちわびたワクチン接種すませたら、その日はランチじゃなく、そのままラブホに行きたい」

「やだー、もう(笑い)」

「それ、NGってこと?」

「ううん…。違う」

不謹慎かもしれないが、ニンゲンが代々受け継いだ”祭り”とは祈願、戒め、節目といったピースが攻勢を成してるとしたら…、今般の新型コロナ禍がもたらした自制期間は、祭りの範疇がもたらした相互陶酔だったかもねっって気もする。

祭り気分の非日常下…、オレもS美も、互いに心を交わす場と相手を貪るように欲していたんだろう。

その最中での、オレとS美の出会いとその先にあった男と女の関係…。
オレたち二人が行き着いたポンコツな関係の正体は、後年はっきりと答えが訪れるんだろう…。
コロナというウンザリな3文字が日常から消えなくとも。



ー完ー









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