BLACK NURSE
「チッ、あのクソジジイ!ふざけんなよ!」

舌打ちをし、悪態を吐きながら拓海はタバコを取り出し吸い始める。頭の中には昼間の出来事が離れず、苛立ちが込み上げてくるばかりだ。

その日、拓海の担当している入院患者は胃カメラをする予定だった。胃カメラを撮る際には食事を取ってはいけないため、患者は朝から絶食状態で胃カメラを待っていた。だが、あろうことか拓海は胃カメラのオーダーをするのを忘れてしまっていたのだ。

当然患者は怒り、看護師からも「しっかりしてください」と怒られた。拓海が百%悪い。だが、拓海は一日逆ギレしていたのだ。

「あのクソババアの看護師も、クソジジイの患者も、俺より格下だろうが!!命を救えるのは医者だけなんだからな!!それをガミガミガミガミとうるせぇんだよ!!マジ死ねって感じなんだけど!!」

イラつきながら道路を飛ばしていた拓海だったが、道の端に新しくできたバーを見つけた。そのバーを見つけるや否や、拓海は迷うことなく駐車場へ車を止めた。嫌なことはアルコールで吹き飛ばすに限る、父から拓海が教わったことだ。
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