【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
「――――初代国王陛下と、狼に姿を変えることが出来た騎士フェイアード卿。それが、この国とフェイアード侯爵家の始まり。そういうことですよね?」
「そうだな……」
物憂げに本をぺらぺらとめくっていたランティスは、目的のページで指を止める。
「そして、フェイアード侯爵家の人間は、狼に姿を変える、変えないにかかわらず、誰かを愛すればその人を手に入れずにはいられない……」
「――――たしか、ランティス様のご両親は」
「そうだな。父が国王陛下の側妃に決まりかけていた母上を、決闘、権力、そして愛で手に入れた話は、今でも語り継がれている……」
「ご両親が愛し合って一緒にいるなんて、素敵ですね?」
浮かない表情のままだったランティスが、メルシアの手を掴んだ。
そのまま、覗き込む瞳は今日も図書室のオレンジ色の魔道ランプの光を反射して、金色に輝いている。
「本当にそう思う?」
「え? はい」
「メルシアに、そんな重いほどの気持ちが、向けられているのだとしても?」
「ランティス様が、私のことを思っていてくれるのだとしたら、うれしいです」
緑色の瞳を瞬いて、それでも真っすぐにランティスを見つめたメルシアは、当然のことのように首を振った。
その、純粋過ぎる表情を見て、おそらく気持ちの一割も伝わっていなさそうだと、ランティスは小さく息を吐く。