【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
(たぶん、アイリスさんじゃないかな?)
その予想は、たぶん当たっているのだろう。
公開訓練には、身体強化を発動しているのか、足元に小さな手のようにも見える、見ようによっては可愛らしい魔力をまとったアイリスも参加している。
頭の上には小さなリスが、居座っている。
訓練をサボることなくこなすようになったアイリス。闇魔法を中心に使う彼女は、もう魔法を人前で使うのを躊躇わないことにしたと、先日のお茶会で言っていた。
「メルメルッ!」
こちらに手を振るアイリス。
メルシアが手を振り返すと、なぜか、訓練場に黄色い悲鳴が上がる。
(そう、人気があるんだよね)
周囲のなぜか熱っぽい視線を感じながら、振っていた手を下げる。
アイリスは前を向いて走っていった。
しばらくして、訓練場から、騎士団の建物の外周を走ってきたらしい騎士が戻ってくる。
「ひゃ?!」
先頭を走っていたはずのランティスの姿がないことに首を傾げたメルシアは、なぜか後ろから抱きしめられた。
「ランティス様?!」
「あーごめん、汗だくなのに我慢できなかった」