【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。

 メルシアは、すでに打ち合いの訓練を始めたランティスに視線が釘付けのようだ。
 家で見ればいいのに、と思えなくもないが……。
 しばらく、真剣なその横顔を見ていたアイリス。
 すると、急に思い出したかのようにメルシアが、アイリスの方に顔を向けた。

「そうそう、アイリスさん! 今日は、マドレーヌを焼いてきたんです」

 メルシアが抱えていたかわいらしいかごには、焼き菓子がたくさん詰め込まれていた。
 かわいらしく、しかも優しいメルシアのお菓子は、味までよいので騎士団で争奪戦が起こるほど人気だ。

 ランティスが、ほかの人間に渡したがらないのだが、家でも食べられるはずだと、周囲が一致団結して立ち塞がっている。

「一つ、いただいていいかしら?」
「はい! アイリスさんに食べていただけると、うれしいです」
「いい子よね……。フェイアード卿にはもったいないお嫁さんだわ」
「旦那様としても、ランティス様は素敵なお方ですよ? 私にはもったいないくらい」
「そうねぇ。相思相愛だったわね、あなたたち。はい、ごちそうさまでした」

 アイリスが去って行く。なぜかランティスが、氷点下の視線でこちらを見ている気がするが、メルシアは気のせいだろうと片付けた。
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