トップアイドルの恋〜好きになってもいいですか?〜

初恋…?

「カットー!」

その声で、一気にその場の皆が肩の力を抜く。

ドラマ、シュート!の撮影は、順調に進んでいた。
今は、高校時代の部活仲間と集まって食事をしているシーンで、23才になった設定の瞬は、スーツ姿だった。

「おーい、瞬!ちょっと」
藤堂監督に呼ばれ、瞬は小走りに駆け寄る。
「ここのシーンなんだけどさ…」
そう言って監督は、さっき演じたばかりの場面を一時停止する。

スマホを手に席を外す紗耶香を、秀が目で追うというシーンで、瞬のアップが映っていた。

「この辺りから徐々に、今までとは別の感情を入れていって欲しいんだよ」
「別の感情、ですか?」
「そう。今までは、紗耶香の事を他の仲間と同じように見ていた秀が、だんだん紗耶香の事を意識し始める。紗耶香のちょっとした行動も気になってしまうんだ。だからこの時も、そういう目線で追って欲しいんだ」
「…はあ」

瞬が気の抜けた返事をすると、監督は瞬を見上げる。

「なんだなんだ?その間抜けな声は。お前にもあっただろ?こういう初々しい経験。初恋を思い出せ!」
「初恋…ですか」
「そう!しばらくはそういうシーンが続くから、思い出しておけよ!」

そう言って監督は、バシッと気合いを入れるように瞬の背中を叩いた。
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