トップアイドルの恋〜好きになってもいいですか?〜
「はい、本場いきまーす。よーい…スタート!」

「申し訳ありません!」
瞬は勢いよく頭を下げる。
「お前なぁ、小石川。最近ボーッとし過ぎじゃないか?」
上司役の俳優のセリフを、下を向いたまま身を硬くして聞く。

はぁとため息をつき、上司のセリフは続く。
「そんなに仕事に身が入らないなら、お前を担当から外す」
「えっ!いや、それだけは!」
「気の抜けた今のお前には任せられん!」
「ちょっと、待って下さい!」

そこで少し間を置くと、上司は声のトーンを落として言う。

「お前、自分の顔を鏡で見てみろ。魂抜けた抜け殻みたいだぞ」
「えっ…」

「はい、カットー!」

ふぅ、と肩で1つ息をしてから、瞬は壁際まで行き椅子に座った。

「おい、見ろよ」

モニターチェックをしている助監督の肩を、藤堂が叩く。

「瞬のやつ、本当に抜け殻みたいになってやがる」

何を考えるでもなくボーッとした様子の瞬に、

「リアルだなぁ。うん、リアル、リアル」

藤堂は嬉しそうに呟いた。
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