トップアイドルの恋〜好きになってもいいですか?〜

いつもの瞬はどこへやら

「うん〜〜??」

陽子は、レッスンルームの後ろの壁にもたれながら、首をひねる。

壁一面の鏡に向かって、サザンクロスの4人が新曲の振り写しをしていた。

陽子は、新しい衣装をデザインするため、曲と踊りを見ながらイメージ画を描くつもりでいた。

順調に振りを覚えて、徐々にカッコよく仕上がってきてはいるのだが…

さっきからどうも瞬が気になって仕方ない。

(なんだろう…なんであんなに、みんなと同化しちゃってるの?)

瞬と言えば、陽子の中では "いい意味でサザンクロスらしくない" 印象だった。

他のメンバーが、とびきりのスマイルで踊る中、瞬だけは、挑むような目付きでカメラを見る。

明るく楽しそうに踊るメンバーの中、1人何かを抱えているような哀愁を漂わせる。

そしてそれが、見る者をドキリとさせ、思わず目が離せなくなってしまうのだった。

そんな瞬が、今は時折笑顔を見せ、他のメンバーとアイコンタクトまで取りながら、フワッと軽く踊っている。

「うう〜〜ん…」

陽子は再び首をひねった。

手にしていた資料をめくり、今までの衣装をパラパラと見返す。

同じデザインでも、瞬の衣装は、時にはベルトにチェーンを付けたり、時にはメタリックな飾りをグローブに付けたりしてきた。

ちょっと尖ったイメージの衣装の写真と、今踊っている瞬とを見比べる。

(この衣装はもう似合わない。爽やかだ。とってもアイドルらしい笑顔だ。良いのか、悪いのか??)

「うう〜〜ん…」

陽子はまた首をひねった。
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