トップアイドルの恋〜好きになってもいいですか?〜
許される恋とは?

いよいよクランクイン

「はい、よーい、スタート!」

カメラが回り、監督を初めスタッフ全員が息を詰めて見守る中、瞬は紗耶香役の女優の肩に手を置きキスをする。

2秒、3秒…まだか?と待っていると、ようやくカットの声がかかった。

「はい、チェックオッケーです!」

1発オッケーだった事にホッとしていると、藤堂監督がやって来た。

「柏木くん。君、なかなかいい芝居するね」
「ありがとうございます」
瞬は素直に頭を下げる。

「今だから言うけど…ホントはね、もっと尖ってるのかと思ってたんだよ。多分、ドラマの主演の話も、別に嬉しくないんだろうな、イヤイヤ現場に来るんだろうなって。ましてや今日はキスシーンもある。ふてぶてしい芝居されるかなって思ってた」
「あ、いえ、そんな…」

当たっていただけに、あまり強く否定出来ずに下を向く。

「さっきのシーン、すごく良かったよ。思わず見入ってしまった。実際の風景に見えたよ」

君を選んで良かった、これからも期待してるよ。

そう言い残して監督は、モニターの席に戻って行った。

(実際の…)

さっきの監督の言葉に、あの日の事を思い出す。
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