生まれ変わりの条件

6.光の中へ



 僕たちを繋ぐ“想いの糸”が切れたのは、絹子さんの心臓が止まった時だった。

 僕はどういう作用が働いたのかも考えず、突然若返った彼女を見つめて言った。

「誰とも、結婚しなかったんだね」

 既に死亡者リストを見て知っていたが、直接彼女に確かめたかった。

 彼女は困ったように微笑み、「あなたがいないから」と答えた。

「倫太郎さんにもう一度会える事だけを願って……半世紀以上も生きてしまったわ。随分と待たせたわよね?」

 そう言って見上げてくる瞳を見つめ、ふと頭に閃くものを感じた。

 ーーなんだ。そういう事か。

「倫太郎さん? どうかした?」

 ハッとしてから目を細めた僕を見て、絹子さんは首を傾げた。僕は彼女の両手を握りしめ、「何でもない」と首を振る。

 神様が僕を例外の魂として呼びつけ、あの二者択一を迫った理由が今になってようやく分かった。

 輪廻転生するための条件として出されたのは、9万9千1の魂を無事に成仏させる事。単なる思い付きにしては何ともでたらめな数字だ。

 その最後の一人が、前世での想い人である絹子さんだった。

 すなわち、これが何を意味するのか。

 神様の趣向が手に取るように理解できた。
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