国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 コンコンコン、コンコンコン、コンコンコン……。
 その浅い意識から浮上させるような物音。無視を決め込もうと思ったのに、一度気になりだすと気になって仕方ない物音。
 コンコンコン、コンコンコン、コンコンコン……。
 規則的に打ち付ける何かは、恐らくノック音だ。
「フローラさん、フローラさん……」
 その音と同時に聞こえてきたのは、彼女を呼ぶ声。こうなったら、夢の世界をさ迷うことはできない。ぱっと毛布から出ると、フローラはそのノック音が聞こえる方へと足を向ける。少し休んでいたおかげか、身体はずいぶんと楽になった。
「フローラさん、こちらにいらっしゃると聞いたのですが」
「はい……」
 扉を開けずに返事をするフローラは、相手を警戒しているから。
「あの、フローラさん。私、ナッティです。ジェシカ様付きの」
 どうやら、扉の向こうにいるのはジェシカ付きの侍女のナッティのようだ。彼女はアリハンスにも同行した侍女である。
「あの、ジェシカ様のお姿が見えなくて。それで、今、みんなで探しているところなのですが」
 ジェシカの姿が見えない。その言葉にフローラはドキリとした。
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