国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「あの、フローラさん。何か、物音が聞こえませんか?」
 ナッティに言われ、フローラも耳を澄ます。何かこう、叩くような暴れるような、そして人のうめき声のような音が聞こえてくる。
「もしかして、冷牢のほうかしら?」
 フローラは宝物庫の脇にある冷牢と呼ばれる部屋へと向かう。こちらも鍵がかかっていない。カリカリとか、ドンドンとか、んーんーとか、そんな音が聞こえるのはその部屋のずっと奥。
 ゆっくりと冷牢に入り、部屋の奥の奥を確認すると、両手両足を縛られて猿轡をされているジェシカの姿がほんのりと確認できた。
「ジェシカ様」
 フローラが守るべき主の名を叫ぶと、冷牢の扉は冷たくて重々しい音を立てて閉じられた。
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