国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 孫に会いに来た。その一言を誤魔化す為の策だろう。
「子供たちは然るべき人にみてもらっていますからね。それでも、子供たちがフローラを好きなことに変わりはありません」
 クリスにとってフローラが子供たちに好かれていることは、自慢すべきことである。
「だから、だ。なぜあの子たちはお前に懐かないのだ?」
「ふむ、なぜでしょうね?」
 それはクリスが心から思っていること。
 セイジの指摘通り、なぜか子供たちはフローラにべったりと甘えていた。
 だからこそクリスは子供たちに「甘えるな」と言って、フローラから引き離そうとする。
 それこそが、子供たちがクリスに懐かない理由でもあるのだが、クリス本人はそれにすら気付いていないのだ。
「ああ、父さん。もし帰るのであれば、どれでも好きな子を連れて帰ってもらってもいいですよ。ですが、ジェニファーはダメです。彼女以外でしたら、スタンでもヘイデンでもケビンでもディーンでもデニスでも、どれでもどうぞ」
「どれでも、って。お前なあ……」
 間違いなくクリスのこういうところがダメなのだ。
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