国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「フローラ」
 ふと、クリスは妻の名を呼んだ。
「何?」
「子供たちだけでなく、私もかまってください」
「まあ」
 彼女は笑うと、彼の頬に軽く口づけをする。
「フローラ、口づけはこちらにしてくださると嬉しいのですが」
 クリスは右手の人差し指で自分の唇を指した。
「そこにすると、クリスの場合はそれだけでは終わらないでしょう? ジェニファーもいるのに」
 言うと、フローラはジェニファーをクリスに手渡した。
 すやすやと眠っていた彼女がクリスの腕に渡った途端、顔を歪め出した。そして、ふえ、ふえ、と変な声を上げ始める。
「私は、ジェニファーにも嫌われているのでしょうか」
「まさか。何を言っているの。こうやって抱っこしないと。ジェニファーだって不安なのよ」
 フローラが抱き方を教えると、クリスはおどおどとその通りにする。何度抱いても抱き慣れないのが赤ん坊というもの。
「なかなか慣れませんね。慣れるためには、もう一人、子供がいてもいいかもしれませんね」
 クリスのその言葉にフローラは「バカ」と笑って呟いた。

【後日談①:完】
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