国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「相変わらず口の減らない野郎だな」
「では、また来ます」
「次は三人で来いよ」
 そんな謎の言葉を白髭が言った。
 カランカランとベルを鳴らして、扉を開ける。薄暗い店から出てきたから、空の青さが目に染みる。
「疲れましたか?」
「いえ、とても楽しかったです」
 あの店に入って魔導書を眺めていただけなのに、あれを楽しかったと言えるような女性はほとんどいない。むしろクリスはそんな女性に出会ったことが無い。むしろ彼女が初めてだ。
 相性率95パーセントというのは、あながち嘘ではないのかもしれない、とクリスは思い始めていた。
「そろそろお昼の時間になりますね。次は、食事でも行きますか?」
「あ、はい」
「何か食べたい物はありますか?」
「あ、え、と……。すみません。思い浮かびません」
 クリスが尋ねても彼女の答えは、彼女自身の意思がないかのように返ってくる。わからない、知らない、思い浮かばない。のそればかり。
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