国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 ちなみに治癒魔法はその属性のどこにも属さない。光というすべての属性を包容する属性に属する。この光属性である治癒魔法を使える魔導士は、無条件で特級魔導士。今のところ、光属性による特級は二人のみ。
「その、フローラ嬢の封じられた魔力を解放する条件というのはわかったのか?」
 腕を組んだままノルトが尋ねる。
「まさか。そんな簡単にわかるようなものではないですよね」
 ふっとクリスも鼻で笑う。
 そんなクリスを見て、ノルトは何か考え込んでいる。恐らく、封じられた魔力を解放する方法でも考えているのだろう。
 だが、彼の口から出てきた言葉は別のものだった。
「そういや、クリス。お前の相手のフローラ嬢だが、魔法騎士でありながら護衛騎士なんだよな」
「そうですが、それが何か? たしか、あの第一王女の護衛を務めているはずです」
 相変わらず無礼な物言いをするクリスだが、それにノルトは苦笑を浮かべることしかできない。
「まあ。お前の話に出てくるフローラ嬢と、あの護衛騎士のフローラ嬢のイメージが異なっていて、だな。だから、もしかしたらお前のフローラ嬢は別なフローラ嬢なのかと思っただけだ」
「何を寝ぼけたことを口にしているのですか。フローラのような素敵な女性が、この世に二人もいるはずはないですよ」
 ふふん、とクリスはご機嫌だった。恐らく素敵な女性であるフローラを思い出しているのだろう。
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