国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「何を作っているんですか」
 クリスは笑いをこらえながら、尋ねた。
「あ、ピタです。手持ちの材料がこれしか無くて。クリス様には物足りないかもしれませんが」
 ピタとは平たいパンの上に、ソースと食材を乗せて、焼き上げたもの。
「いいえ。あなたがそうやって作ってくれたものに物足りないなんてありませんよ。今からとても楽しみです」
 クリスがそう言えば、フローラは頬を夕焼けに染め上げられる空のように色を変えていく。
「クリス様。恥ずかしいですから、向こうで休んでいてください」
 フローラは少し不思議な気分だった。サミュエルと一緒にいたときは、なぜ手伝ってくれないのだろう、なぜ自分だけ休んでいるのだろう、という不満が溢れていたのに、クリスにはそういう感情が湧いてこない。
 楽しみです、という言葉を口にした彼に、少しでも美味しいものを食べさせてあげたいという気持ちになる。
 フローラは焼きあがったピタと、それから簡単なスープをテーブルの上に並べた。
「このようなものしか無くて、すいません」
 クリスは、なぜ謝るのか、という不思議な顔を浮かべていた。
「美味しそうですね」
 その言葉でフローラに笑顔が戻る。
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