先輩が愛してくれた本当のわたし
どうしたらいいかわからない


あふ、と航太はロッカールームで大あくびをした。
遅番のため昼前に出勤して午前中の仕事をこなし、いまは遅い昼休憩中。

コンビニで買ったから揚げ弁当を食べながら深いため息を吐いた。

昨日は寝たような寝ていないような、夢うつつのまま朝を迎えてしまった。
リカと十二時近くまで飲んで、酔い潰れたリカを自分のベッドへ寝かせた。リカから迫られたことにかなり期待をしてしまって興奮してそのまま襲いたくなる衝動を必死に抑えた。

(リカちゃんの寝顔、めちゃくちゃ可愛かったな)

思い出すだけで頬が緩む。
しばらく眺めていたことは秘密だ。

――でも私が望んだらしてくれるんでしょ?

リカの言葉が何度も頭の中を反芻する。
するのが正解だったのか、しないのが正解だったのか、航太はぐるぐると悩み、結局結論は出ない。
それに今朝だってそんな雰囲気になってしまって、アラームが鳴らなければ確実に手を出していた……たぶん。

(いや、あれは手を出した……のか?)

頭の中を真っ白にするような蕩けるキスの余韻がまだ残っている気がする。

「……航太? なんか、大丈夫か? さっきから動かないけど」

いつの間にか休憩に入った同期の杏介が、から揚げ片手にぼんやりしている航太を見て怪訝な表情をする。
どうやらどっぷり一人の世界に入っていたらしい。

「お前はいいなー、イケメンで優しくて気遣いができてさぁ」

「……から揚げに変な物でも入ってたのか?」

「……そうかもな」

航太は残りの弁当をかき込んで、ぐったりと椅子に体を預けた。
ギシッと椅子が音を立てる。
目を閉じればやはり今朝のリカとのことが思い出されて胸がザワザワと揺れた。

「なあ、杏介?」

「んー?」

「リカちゃんって可愛いよな」

その言葉に杏介は読んでいた文庫本から視線を上げ、航太を見る。相変わらず航太は目を閉じたまま、椅子に体を投げ出している。
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