月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

契約

 トールのかまって発言を受けて身悶えていたティナが、ようやく落ち着いた頃、ティナの膝の上で眠っているアウルムを見たトールが思い出したように言った。

「そう言えば、最近アウルムの毛の色、変わってきたと思わない?」

「へ?」

 トールに指摘されたティナは、改めてアウルムを見る。

「……確かに」

 ずっと見ていたから気付かなかったが、意識して見てみると、真っ黒だったアウルムの毛色が少し薄くなっていた。

「やっぱり。俺の気のせいじゃなかったか」

「一体どういうことだろう? アウルムは元々黒色じゃなかったのかな?」

「うーん。色んな説が考えられるよね。例えば、ティナの<浄化>で瘴気が抜けると同時に色も抜けたのか、それとも元々違う色だったのが瘴気で黒くなっていたのか……」

 トールの仮説はどちらも有り得そうだった。
 どちらにせよ、ティナの<神聖力>が関係あるのは間違いない。

「じゃあ、アウルムの浄化をもっと強くやってみたらどうなるのかな?」

「原因はわからないままだろうけど、色はもっと変わるんじゃないかな」

「そっか……どうしよう……」

 このまま浄化をし続ければ、アウルムの色は黒ではなくなるだろう。それはそれで見てみたいティナだったが、アウルムがトールにそっくりじゃなくなるのが、何だか勿体ないような……残念な気持ちになってしまっていた。
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