月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
 とにかく、今はアレクシスがトールの要求通りに立ち回ってくれるように祈るばかりであった。





 列に並ぶことしばらく、ようやくティナたち一行の順番がやって来た。

「はい、身分証の提示をお願いします。……はい、問題ありませんね。じゃあ後は……その魔物ですか。ほぅ……これは珍しいですね」

 入国審査場で審査を受けていたティナたちは、ギルドカードを見せるだけであっさりと許可が下りた。
 しかしアネタと一緒にいるアウルムを見た審査官は、物珍しそうにアウルムを眺めている。

「従魔契約をされているのなら、契約紋の提示をお願いします」

「あ、はい!」

 ティナがアウルムの額に魔力を流すと、赤く光る魔法陣が浮かび上がる。

「おぉ……これは凄い。随分従魔に懐かれているのですね」

「え? そうなんですか?」

「はい。親和性が高いほど魔法陣の色が赤いんですよ」

 どうやら従魔契約の魔法陣は元々赤ではなかったらしい。
 審査官曰く、従魔との信頼関係が強いほど魔法陣の色は赤く、低いほど青いのだという。

「わふぅ!」

「ふふ、嬉しいな。アウルム、これからもよろしくね」

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