月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

両親の遺産

 ティナが自由になり、正式に冒険者となった次の日。
 いつもの習慣で早い時間に目が覚めたティナは、冒険者達が酔い潰れているのではないかと気になって、酒場に様子を見に行ってみることにした。

 ちなみにティナはまだ未成年ということもあり、頃合いを見計らって宴から抜け出し、ギルドに併設されている施設に泊まらせて貰っている。

 ティナのお祝いで夜通し騒いでいた酒場は現在、ティナの予想通り盃や食器が散乱し、酔いつぶれた冒険者達で溢れ、酷い惨状となっていた。

「……う〜〜ん……水ぅ……」

「うあぁ〜〜……頭いてぇ……」

「酒……酒ぇ……おえっぷっ」

 ベルトルドの奢りで遠慮をなくした冒険者達は、浴びるように酒を飲んでいた。そのため、二日酔いになった者が大量発生しているようだ。

「おはようティナ。よく眠れたかい?」

 ティナが冒険者達に呆れていると、目の前の惨状と場違いな、爽やか声がホールに響き渡る。
 声がした方向へティナが振り向くと、そこにはいつもと変わらずきっちりとした身だしなみのベルトルドが、これまた爽やかな笑顔で立っていた。

「あ、ベルトルドさん、おはようございます! ベルトルドさんは二日酔いじゃないんですね」

 酔い潰れている冒険者達とは違い、ベルトルドはいつも服をしっかりと整えている。その姿は冒険者というより優秀な文官のようだ。
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