月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
アウルム
『ティナー! 朝だよー! 起きてー!』
「ん……おはよう……」
アウルムの元気いっぱいな声で起こされたティナがゆっくりと目を開けると、テントの隙間から薄い光が差し込んでいた。
いつの間にか意識が落ちていて、夢も見ずぐっすりと眠っていたらしい。
ティナが元気なアウルムと一緒に外に出てみると、森の中にうっすらと霧が立ち込めていて、木々の隙間から漏れる朝の光と影のコントラストが、神秘的な光景を描いていた。
朝日を浴びながら、ひんやりとした空気を胸いっぱいに吸い込んだティナは、今日も一日頑張ろう、と気合を入れる。
ティナはテント内にある寝具やマットをさっと片付けると、朝食準備に取り掛かることにする。
「よし! アウルム、ご飯にしよっか」
『ごはんー! ごはんー!』
ティナは夜露で湿った薪を魔法で乾かすと、火を起こしてアウルム用の肉を焼き、昨日残しておいた煮込み料理を温める。
煮込み料理は野菜がトロトロで、更に味が染み込みとても美味しかった。煮込み料理は手間が掛からないので、これからの定番にしようと思う。