月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
 きっと今頃、王宮に戻ったトールは王位に就くために多忙を極めているだろう。
 そしてクロンクヴィストに新しい王が即位し、国中がお祭り騒ぎになる日もそう遠くないかもしれない。

「……まあ、しばらくここにいれば噂を聞かずに済むしね。ほとぼりが冷めるまでなるべく街には行かないようにしなきゃ」

 トールが結婚するなんて噂を聞いてしまえば、立ち直れる気がしない。
 だからそれまでに、トールのことをキッパリ諦められるように努力しなければ、とティナは思う。

 それにイロナに占ってもらった結果は、未来ある輝かしいものだった。ならば、この苦しい気持ちもそのうち風化して、楽しかった思い出に変わるに違いない。

「……よしっ! 散策しよう!」

 思わずトールを思い出して、しんみりしてしまったティナは調子を取り戻すため、設営場所の周りを見て回ることにする。

「アウルム、ちょっと周りを見に行くんだけど。一緒に行く?」

『お散歩ー? ぼくも行くよー! ティナを守るよー!』

 ご飯の後だから、てっきりお昼寝をすると思っていたアウルムは、ティナを守るために一緒にいてくれるという。

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