月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
 まるで大したことではないように、ふぉっふぉっふぉと笑うノアだったが、30年という月日はそう簡単に笑い飛ばしていい時間じゃない、とティナは思う。

 どうしてそんなに長い時間、こんな森の奥深くに一人で暮らしているのだろう、と不思議に思うティナだったが、人には何かしら事情があるのだ。
 自分だってもしかしたら、ノアのように何十年もここで暮らすかもしれないのだ。

「その間、この小屋にたどり着いた人はいませんでしたか?」

 いくら事情があるとはいえ、30年間も一人で過ごすのはとても寂しいのではないか……。もし自分だったら耐えられるかどうかわからない。

「ふぅむ。たまにそういう人間はいるのぅ……。最近では冒険者の夫婦とか」

「え?! 冒険者の夫婦?! あ、でも最近か……」

 一瞬、両親がここに来たのかと期待したティナだったが、最近来たのなら人違いだろう。

「そういう嬢ちゃんは<聖獣>を連れて何しに来たんじゃ?」

「は? え? <聖獣>……?」

 アウルムを指して<聖獣>だと言うノアに、ティナは一瞬ぽかん、とする。

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